業界を背負う使命感が新時代を創造する
常にトレンドをリードするチューナーだからこそ、ファブレスには新しいスタイルを創造していく義務がある。しかし、元来ホイールというものは機能を担うパーツである以上、強度や軽さといった機能性を重視することはあっても犠牲にすることはあってはならい。すなわち、ホイールの世界で新たなトレンドを確立していくのがいかに困難であるかは想像に難くないであろう。しかし、ファブレスはその殻をいとも簡単に打ち砕き、見る者に新しい世界を知らしめてくれる。このサンクヴァリエとカトルヴァリエもしかりである。
温故知新。このモデルにはそんな言葉がよく似合う。スポークという古典ともいえるデザインモチーフをリスペクトしながらも、21世紀の今に相応しいスタイルを追求することを恐れない。世の中にはスタイル重視の結果、重たくなったり、コスト削減のために精度が悪くなったりするという、本末転倒なホイールが氾濫するなか、ファブレスは先人が残した発明に敬意を表すことを忘れない。だからこそ、機能と意匠を両立させたホイールを作り続けることができるのである。 |
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複雑な造形が織りなす“極み"の世界
カギとなる要素は2つ。1つはニューモデルの共通項とも言えるブラックポリッシュの標準化。MB-5の21・22インチがリリースされた時に初登場となったブラックポリッシュは相対的にシルバーを際立たせる効果がある。
2本の細いスポークが【V】の字に見えるだけでなく、高級感あふれるピアスボルトがより強調され、エッジを効かせた造形がよりアグレッシヴに映るのである。さらに、ブラックアウトされることで視覚的な面積が小さくなり、ホイールの口径が大きく見え足元にダイナミズムが生まれる。特にカトルヴァリエは円を占める面積が大きくなる造形でもあるため、ブラックポリッシュがシルバーを引き締める効果は予想以上に大きい。これまでにディープリムをはじめ、奥行きのある造形に徹底的にこだわってきたファブレスならではの新しい発想といえる。
もう一つは、2面性を持ったデザインへのアプローチ。メインのスポークはリムエンドにかけて落ち込み、両脇を支える2本の細いスポークは緩やかなカーブを描くことで脚を長く見せている。これら2種類のスポークが織りなす複雑かつ繊細な造形がスポーティーにもラグジーに見える2面性を生んでいるののである。見る人や装着するクルマによって印象が変わるというのは、まさにこれからのトレンドになり得る新しい流れであり、至って正常な進化なのである。今後、多くのフォロワーを生み出すことは自明であるが、“本物"を作ることができるのは一つ一つのプロセスを確実に昇華させてきたファブレスだけである。 |
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